大阪の鉄道貨物の変化…吹田貨物ターミナル駅開業

弊社の大阪事務所へは大阪駅を北に出て、梅田貨物駅の下を通る地下道を利用します。この地下道は、毎朝多くのサラリーマンが行き来しますが、その上では大量のJR貨物のコンテナが発着し、多くのトラックとの積替えが行われていました。
梅田貨物駅は、明治7年12月1日に大阪駅貨物扱所として開設され、昭和3年12月1日に梅田駅と改称して今日まで138年余りの間、大阪の重要な貨物輸送の拠点でした。お世辞にもきれいとは言えませんでしたが、駅の赤くて大きな丸い屋根は大阪駅キタの象徴でした。この屋根は建設されて50年たっても、建設関係者の見学が絶えない逸品だったようです。そんな大阪の鉄道貨物事情がこの3月に一変しました。この梅田貨物駅が3月15日をもって、コンテナ取扱を終了し、31日で廃駅となりました。

●大阪のJR貨物の拠点

3月16日に、かつて東洋一の規模を誇った吹田操車場跡の54%を利用し、E&S(着発線荷役)方式を採用した「吹田貨物ターミナル駅」が誕生しました。この貨物ターミナルは、1987年の国鉄分割民営化に伴い、梅田貨物駅の土地を売却するための代替移転先として計画されましたが、バブル崩壊や移転先の反対運動により遅れていました。この新設の吹田貨物ターミナル駅では梅田貨物ターミナルの物量の半分の約100万トン/年を取り扱う予定で、東海道本線上に位置する利点を生かし、全国各地区との結節点としての役割を担います。
あと残りの半分は、同じくリニューアルした百済貨物ターミナル駅で対応する形となりました。百済駅はコンテナホーム拡張と26両(1300トン)編成列車に対応できるように改良されました

●E&S(着発線荷役)方式とは何か。

吹田、百済共に採用されているE&S方式とはEffective and Speedy container handling systemの略で、着発線荷役方式とも呼びます。従来鉄道貨物は、架線がある着発線から架線のない荷役線に貨車を移動し、そこで積卸の荷役を実施します。荷役完了後は再び着発線に貨車を運んで、本線牽引の車輛に連結する必要がありました。この場合、コンテナが主流となっている現在では、どうしても貨物到着→荷役線引込→荷役作業→本線移動→貨物出発という作業は、せっかくハンドリングしやすいコンテナを利用しているのに、到着から出発までにかなり時間がかかってしまう状況になっていました。
鉄道ファンならこうした連結、切り離し作業は魅力ある風景で、鉄道模型にも貨物列車を好む方がおられますね。これに対し、E&S(着発線荷役)方式は、普発本線までトラックが乗り入れ、架線の通電を停止し、その場でフォークリフトやトップリフターにより荷役を行い、トラックに積卸を行います。荷役完了後は、すぐ貨車の出発が行えるため、大幅な時間短縮がされることとなります。
こうしたE&S方式の貨物ターミナルは、今年3月16日現在、全国に29カ所となり、今後40カ所に導入されるそうです。(JR貨物新中期経営計画「ニューストリーム2007」より)
このように荷役方法が異なると、ターミナル駅も全く外見が違います。梅田貨物駅と吹田貨物ターミナルの違いを見てみましょう。

梅田貨物ターミナル一部(左上)吹田貨物ターミナル(イメージ画)本線から荷役線が支流となって線路が扇状に広がるイメージの梅田に対し、吹田は真ん中にトラック停車場、コンテナ荷湖場が広く取られて、まるで旅客駅を大きくしたようなすっきりしたイメージです。
グリーン物流総合プログラムによるCO2削減の施策の一つである「鉄道の利便性向上」に一役買っているE&S方式が、今後は日本全国に導入され、物流事業者が互いに知恵を出し合い連携・協働すること(パートナーシップ)により、環境負荷を削減しつつ、産業の発展につながることを期待します。また梅田貨物駅跡地の再開発だけでなく、貨物利便性のUPで関西の経済が活性化することを望みます。

さて最後に、梅田貨物駅の最後の日を書き添えておきたいと思います。15日午後に営業終了の式典が開かれました。特別に仕立てた「さよなら列車」がJR貨物関西支社の幹部や社員が見送られ出発しました。そしてついに23時57分、多くの鉄道ファンが見守る中、最終貨物列車を送り出し138年の幕を閉じました。
会社の窓から眼下に、車両も、コンテナも、リフトもいない梅田貨物ターミナルが見えます。 時折夜遅くまで仕事をしていた時、貨物駅でリフトや車両の光が左右に動いている景色や、何十車両も引いていく機関車の音に、なんだかカづけられているような気がしていました。
今は何もなくたたずむターミナル駅は、悲しく感じるほどの姿をみせています。
「さようなら、梅田貨物駅。長い間ありがとうございました。」

(文責:岩本)

索引 : JR貨物ホームページ ニュースリリース
国土交通省出典「国土画像情報(カラー空中写真)」
ウキペディア「着発線荷役方式」

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第209号 2013年4月3日)

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