言わずもがなの前提条件とSCM【前編】

毎朝の出勤は、夏も冬もスーツ姿でネクタイと革靴スタイルと言うのが、クールビズ導入前の当たり前の姿でした。
さらに、堅い会社の場合には、スーツやワイシャツの色、柄など、さすがに内規はないものの「ふさわしくない」とされた場合には、総務部から「指導」されるケースもありました。
制服がない本社や営業支店には、勤務や顧客への訪社スタイルに、「言わずもがな」の前提があったわけです。
スーパークールビズが登場した今でも、ジーンズやTシャツは不可という会社が大半です。
親しき仲にも礼儀ありと言われるように、大半の人が共通認識する場面に応じた服装には大きな違いがないと言えます。

ちなみに、「言わずもがな」とは、三省堂の大辞泉では、
[1] 言う必要のないこと。むしろ言わない方がよいこと。
[2] 言うまでもないこと。もちろん。
とされています。

しかしながら、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の世界では、この見えにくい「言わずものがな」の前提が、効率性の障害になるケースが多く見られます。

<1.サプライチェーンの特徴>

さて、皆さんもご存じの通り、サプライチェーンとは最上流の原材料調達の源流から様々な企業により生産や加工を経て製品化されたモノを販売し、市場/顧客に最終商品として到達させる一連の供給連鎖のプロセスを言います。

この中で、サプライチェーンを構成する企業間の壁を越えるには、原材料調達の購買取引と、製品販売の売上取引が存在しています。

また、同一企業内で部門間の壁を越えるには、社内で取り決めた業務ルールに従った業務プロセスが存在しています。

このように、サプライチェーンが企業間の壁や部門間の壁を越えるには、調達費や売上高の代金支払や請求に関するお金の他、取引維持コスト、業務体制維持コスト、物流コスト等のさまざまなお金や情報の移動、モノの移動を伴っています。

<2.サプライチェーン上の言わずもがなの前提>

このサプライチェーンが企業間の壁、部門間の壁を越えるには、さまざまな「言わずもがなの前提」が付帯しています。

例えば、
1.「欠品発生は販売先の顧客を逃がし、売上低下に直結するのであってはならない」
2.「受注締切時間を遅くすると、他社に逃げていたオーダーの取り込みがはかれる」
3.「調達、販売の増加が見込めないので、生産ロットサイズ拡大で製造原価を低減」
4.「販売アイテム増加でキメ細かく顧客ニーズに対応すると売上高が伸ばせる」
等々です。

確かにある一面では真実をついており、実際に期待通りの成果につながるケースも存在しています。

しかしながら、対象とする設定範囲の大きさ、結果検証サイクルや体制の準備、マイナス面の影響評価など、一定の条件が揃った場合については…との前提条件が付きます。

上記1.では、欠品は顧客流失原因の1つになりやすい事は分かりますが、だからと言って販売アイテム全てに無尽蔵の在庫を抱える訳にはいきません。

上記2.では、受注受付時間が長いとオーダー獲得の機会も増えますが、だからと言って24時間受付しても、輸配送便の準備が1日1回だとモノが顧客に届きません。

上記3.では、生産ロットサイズ拡大をすると製造原価が下がりますが、だからと言って販売増加がないのでは在庫滞留期間により鮮度が落ちるだけでなく、倉庫費も増えます。

上記4.では、キメ細かいニーズ対応で売上機会が増える事は分かりますが、だからと言って販売アイテム増加分の生産ロットサイズ分割や受注量分散によるロス費用が増えます。

特に、部門間の壁は社内の役割分担で業務プロセスが構成される事から、例えば、

5.「物流は物流部門に会社が任せたので、責任転嫁しないで部門で解決してほしい」
6.「対象業務の上流、下流工程は別部門の分担だから、他部門に口出しできない」
7.「在庫管理は生産管理部門の責任なので、欠品発生は責任を果たしていない」
8.「顧客ニーズ対応が製造業の責務なので、その実現方法は工場で準備して欲しい」
9.「営業、生産、物流、それぞれの部門でのコスト削減の集積が最低コストになる」

これらも、組織の運営と管理、業務機能と人材配置の側面から見ると一面の真実をついており、「言わずもがなの前提」となっているケースをよく見かけます。

しかしながら、サプライチェーンの業務活動全体を統括し、全体最適化に向けたバランスを見て調整を行う部門や機能がない企業が大半です。

次回【中編】に続く

(文責:難波)

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物流ソリューションフェア(NECネクサソリューションズ(株)様主催)にてセミナー講師を務めました
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第149号 2011年11月9日)

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