複雑なランチタイム問題

今日のランチタイム。

午後の打ち合せで使う資料を少し読み直しておきたいし、外に出歩くのも面倒だし。だから今日はこの建物内にあって、すぐに出してくれる社員食堂がベスト。事務所にいるときは、ほとんど社員食堂です。

でも、今日はそこまでお腹が空いていないし、梅雨冷えのせいで少し体調も悪いので、ご飯ものより軽くて消化が良いパスタにしました。他のメニューと値段もそれほど違わないし、お財布の中身はまだあるので(給料日までの日数を考えたら、少し足りない気もするけど)、カップ麺じゃなくても大丈夫。

となりにクロワッサンも置いてあるけど、今朝ツイストドーナツを食べたし、炭水化物ばかりになるから、今日は要らないです。でも、少し気になるのは、そのとなりのモンブラン。そういえば昨日は少し残業して頑張ったから自分にご褒美をあげたいけど、この前の健康診断で体重が少し増えていたのも気になります。そんなこんなで、パスタがゆで上がるまでの間に悩んだあげく、ケーキは別腹だから、大丈夫だから、食後のデザートとして頂きました。

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ビジネス上のゴールの多くは複数の『サブ・ゴール』で構成されています。

それらは全てが定量的で明確な基準があるわけではなく、また相互に優劣があり、トレードオフの関係になることも一体の関係になることもあり、そして他のいずれかが満たされたとき、もしくは満たされないときに消滅するものもあります。

上記では、アクセスの良し悪し、ランチに取れる時間、空腹度、体調、価格、お財布の中身、直近の食事、満足度、体重がそれぞれサブ・ゴールです。この内、定量的で明確な基準があるのはお財布の中身(こちらは条件と言い換えることもできます)、定量的であるのはアクセスの良さ、ランチに取れる時間、体重であり、逆に定性的で曖昧であるのは空腹度、体調、満足度、定性的であるのは直近の食事です。また、満足度と体重はトレードオフの関係にあり、アクセスの良し悪しとランチに取れる時間は半ば一体の関係にあり、満足度が満たされるときに体重というサブ・ゴールは消滅しています。

定量的で明確な基準があるゴールを『ハードゴール』、定性的で曖昧なゴールを『ソフトゴール』といいます。

ビジネスのゴールの多くは、資本回転率等のハードゴールとは別に、社会的責任等のソフトゴールがサブ・ゴールとして存在し、それらの組み合わせによる総体としてのゴールはソフトゴールになります。

マイケル・ルカらは、アルゴリズムを最大限に活用する方法として、「ソフトゴールを大切にしたいと思うなら、それを言葉で定義し、その重要性を定量化しなければならない。ソフトゴールの測定が難しい場合は、アルゴリズムが導く結果をもとに行動する際に、そうしたゴールをたえず念頭に置く必要がある。」といいます。(*1)

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例えば自動配車アルゴリズム。市場に存在するソフトウエアの多くは経営効率最大化を目的変数として設定している、ハードゴール型です。ただし、実務にて自動配車システムを配車計画時に利用しようとする際、ドライバーに不信感を与えないために不平等性を取り除くことや、不確実だが過去の経験により想定される突如とした物量増減に対応すること等、ハードゴールの目的変数に影響を与えてでも、ソフトゴールを満たそうと考える傾向にあります。

マイケル・ルカらの言を踏まえ、自動配車アルゴリズムの活用に際し、ソフトゴールについて第一に考えるべきことは、ソフトゴールを定量化し、それをアルゴリズムに組み込むことだと考えます。前者であれば、例えば各ドライバー稼働時間の分散最小化を目的変数に組み込むこと、後者であれば、例えば過去の突如とした物量増減の推定を統計的に導き、あらかじめ説明変数に組み込むことでしょうか。ただし、ソフトゴールを定量化しアルゴリズムに組み込むことは、ソフト面でもハード面でも多くの課題があります。そのため、マイケル・ルカらの言の後半のように、アルゴリズムが算出した解に、ソフトゴールの要素をユーザーが付け加えていることが多いです。

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上記は机上計算の話であり、さまざまなサブ・ゴールを加えることができます。しかし、実務においては現実が全てです。自動配車アルゴリズムがさまざまなサブ・ゴールを考慮した素晴らしい配車計画を算出したとしても、その通りに車輌勢力が準備できるとは限りません。資源が有限だからです。その場合、ベストな配車計画を現実に合わせて編集し、ベターな配車計画に変えていきます。その際、いくつかのサブ・ゴールは重要度を落とす、もしくは消滅することでしょう。まるでモンブランという現物を目にしたとき、「体重:明日も体重をベストな状態に維持したい」というサブ・ゴールが消滅したかのように。

逆に、アルゴリズムを構築する者は、理想と現実は異なり、ベストなゴールを構成するサブ・ゴールは現実においては変化、もしくは消滅し得るということを十分に考えなければなりません。ユーザーへのヒアリングから導くゴールの構成はあくまで理想であり、同じユーザーでも現実を直視した際には別のゴールを構成し得るからです。

(文責:松室 伊織)

(*1)マイケル・ルカ、ジョン・クラインバーグ、センディル・ムッライナタン「アルゴリズムを最大限に活用する法」「テクノロジー経営の教科書」、44頁。

【参考資料】
・「アルゴリズムを最大限に活用する法」マイケル・ルカ、ジョン・クラインバーグ、センディル・ムッライナタン(ダイヤモンド社、2017年4月)
・「テクノロジー経営の教科書」(ダイヤモンド社 2019年6月)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第410号 2019年7月17日)

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