物流コンサルティングの現場で「伝える」を考える。-2

(1はこちら)

前回はコンサルティングの現場において私が顧客とのコミュニケーションで意識しているポイントについてお話ししました。話が相手にうまく伝わっていない具体的なシーンをいくつか挙げましたが、こういった事態が起こるのには原因があります。そして、その原因は大きく3つに分けられます。これから各原因について詳しく説明していきたいと思います。

最初に、相手がこちらの話に納得できていないときのリアクションをイメージしてみてください。こちらの内容に対する反応は大きく分けて2つあると思います。1つ目は「本当にそうなのですか。」のような話のつながり(縦の論理)の弱さを示唆する反応。そして2つ目は「本当にそれだけなのでしょうか。」のような話の漏れ(横の論理)を疑う反応です。これらが前述の話が伝わらない3大原因のうちの2つです。

まず縦の論理について具体的に説明します。「風が吹けば、桶屋が儲かる。」という非常に有名なことわざがあります。知らない方はほとんどいないと思います。しかしながら、このことわざを初めて聞いたとき、なぜ風が吹けば桶屋が儲かるのかを即座にイメージできた方は稀だと思います。ほとんどの方が前述の「本当にそうなのですか。」と感じるはずです。参考までに風が吹けば桶屋が儲かる理由を以下に記します。

風が吹けば砂埃のために目を病む人が多くなり、目を病んだせいで失明すれば音曲で生計を立てようとするから三味線を習う人が増え、三味線の胴に張る猫の皮の需要が増える。

そのため、猫の数が減少し、猫が減れば猫が捕まえるネズミの数が増える。ネズミは桶をかじるから桶がよく売れるようになり、桶屋が儲かることから。

上記は確率の視点で考えると納得感が薄い話かもしれませんが、身近に縦の論理の存在を体感させてくれる好例だと思います。

では、「本当にそうなのですか。」と質問されないためのポイントは何でしょうか。それは説明に対する相手の反応をしっかり観察することです。なぜならば、話がつながっているか否かについての絶対的な基準はなく、聞く相手によって基準が変わるからです。説明中に相手が十分理解できていない様子なのに、そのまま話を進めると最終的に「本当にそうなのですか。」と質問をされることになります。また、逆の場合も注意が必要です。相手がすでに理解できていることについて、長々と説明を続けると「話が長い」や「要点が理解できていない」と思われてしまう可能性があります。特に人前で話すことに慣れていない方は、資料を読むことに夢中になり、相手の顔を見る余裕がなくなってしまうこともあると思います。そういった方は事前にリハーサルをすることをお勧めします。「プレゼンテーションは奥が深い!-7」にもあるように、万全な準備が精神的な余裕をもたらしてくれます。前述の「相手の反応を観察しながら説明する」はまさに言うは易く行うは難しといえるでしょう。自然にできるまで時間がかかるので、失敗を恐れず地道に場数を踏んでいくことが肝要です。縦の論理に関する説明は以上です。次稿では輸送コストを題材に横の論理について説明したいと思います。

(文責:野尻 達郎)

【参考資料】
『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人,英治出版,2020年1月27日)
故事ことわざ辞典

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第431号 2020年6月10日)

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