天災に備えるリスクマネジメント

免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用により、本庶佑京都大学名誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。iPS細胞の開発で一躍世界の人となった山中同大学教授も、某TV番組のインタビューで、本庶名誉教授のこれまでの功績を述懐しながら、今回の受賞は遅すぎると嬉しそうに話されていたのが印象的でした。

人間に備わる免疫細胞は、体内に侵入してきた外敵となるウィルスや病原菌を退治する力を持っていますが、がんができると、患者さんの免疫力が下がることが分かっています。がん細胞が、免疫チェックポイントを利用して免疫反応にブレーキをかけることが原因です。本庶先生の発見した免疫チェックポイント阻害因子によって、このブレーキを解除し、免疫細胞が本来の機能を発揮して、がん細胞をやっつけることができるわけです。医療の専門家ではないので詳細を述べる事は差し控えますが、この仕組みを応用したがん免疫治療は注目度も高く、世界中でその技術が進行しつつあります。残念ながらその治療効果については、未だ認められていませんが、死亡率が高いとされるがん患者にとって、一縷の望みになっていることは確かなようです。

これまでにもご紹介してきた通り、当社は再生医療に関連する物流に携わっており、既存顧客の中には、まさにこのがん免疫治療に効果的な再生医療等製品を開発している企業があります。ここにきて、本庶名誉教授のノーベル賞受賞で同治療が注目され、がん患者からの問い合わせも増えているということもお聞きしました。

先日、弊社で受託しているがん免疫治療における配送業務において、配送当日に台風に遭遇するということがありました。天気予報では、同業務を行う地域での影響は少ないとの判断で実施しましたが、通常であれば2時間弱で配送できる経路において、大渋滞が発生。回避経路の選択肢もほとんどなく、更に予期しなかった高速道路の全面通行止めにより、一般道路に車両があふれて更に状況が悪化。緊急手段として、ハンドキャリーによる電車での輸送手段も考えましたが、JRが不通となって対応できなくなりました。一方、治療を予定していた患者さんからは、様々な事情で当日の治療を希望しており、予定時刻を過ぎても待ちたいとの意向でした。更に取引先からは、出荷した再生医療等製品(がん免疫治療で使用する患者自身の免疫細胞を培養したもの)はフレッシュな状態で投与できない場合は破棄せざるを得ず、高額な損害を被ることになるとの指摘を受け、運行管理者は一定の制限時刻を設定して配送するという決断をしました。結果的には、予定時刻を5時間近く超過して納品することになりましたが、患者さんは無事治療をすることができました。

物流業務の管理者にとって、このような自然災害による物流リスクをどのように想定するかは、非常に難しい課題でもありますが、このケースにおいて、皆さんであればどのような対応を考えられたでしょうか?

私の周囲の多くの方からは、取りあえず配送するしかないでしょうと言われました。しかし、実際に配送に従事したドライバーは、このような配送を実行する管理者に対して不満の声を挙げました。ドライバー自身のリスクをどこまで想定していたのかというのが一番の理由です。

当社では、今回のケースを受け、取引先との天災対応フローを見直すことにしました。様々な議論の結果、事前の天災気象予報を受けてワーストシナリオを想定し、配送前日に運行の可否を決定することを基本とすることにしたのです。患者に対する事前告知、再生医療等製品の品質保証、ドライバーの労務管理等を考慮して総合的に判断すると、例え配送当日に気象予報が外れたとしても、様々なリスクは回避できると考えました。物流に携わる以上、こうした天災リスク管理は重要課題だと認識しています。近年、異常気象が通常のように発生するようになりました。天災における既存のリスクマネジメントの有効性評価と是正が求められているのではないでしょうか。

(文責:貞 勝利)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第394号 2018年11月21日)

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